第68章 出会いと別れ
ウォール・マリア奪還作戦が1ヶ月後に正式に決まったとある休日明けの朝。
最初に異変に気づいたのはリヴァイだった。
「クレア…おい、クレア?!」
「は、はい!!すみません!な、なんでしょうか?」
「顔色が悪い。どうした…?」
異変とは、クレアの顔色だった。
リヴァイは朝一挨拶を交わした時からおかしいと思っていたが、時間がたつにつれどんどん顔色は悪くなり口数も減っていく。
明らかに体調が悪そうだ。
「す、すみません…」
「謝るな。どこか具合が悪いのか?」
「あ、いえ…そういうわけではありません…」
いや、こんなに真っ青な顔をしてそういうわけもどういうわけもないだろう。
クレアの右隣に座っていたリヴァイは両手で頬を包んで自身の方を向かせると、じっとその目を見つめた。
すると、観念した様にクレアはボソリと呟く。
「あの…今朝から生理がきてしまって…おそらくそのせいかと…」
「そうか……」
そう言うと、クレアはすぐに仕事を再開させたのだが、リヴァイは腑に落ちてなかった。
女の生理の仕組みくらい勿論だが知っている。
だが調査兵団に、生理で体調を崩す女兵士はリヴァイの知る限り1人もいなかった。
ただでさえ日々厳しい訓練に、命を賭けた壁外調査。
生理が重い訓練兵はそもそも調査兵団にはやってこないのだ。
憲兵団や駐屯兵団には“生理休暇”なる制度がある様だが、調査兵団に生理で体調を崩す兵士がいないからだろう。
その制度すら導入されていなかったが、不満を言う者はいなかった。