第10章 奇行種に完敗
──壁外調査前日──
前日にもなると、ピリピリとした空気は通り越し、みな闘志の炎を宿したような雰囲気になった。
数日前に起きた新兵2人の事件のあとは、全体の指揮が落ちたように感じたが、各班長たちの激励もあり、なんとかもちなおしたようだった。
肝心のザズとリゲルは、北の僻地での生涯幽閉で強制労働となり、事件の翌日には北に連行された。
生涯幽閉となればクレアの目の前に現れることは2度とない。
クレアの憂いは全てなくなり、今日まで気持ちが下がることなく訓練に打ち込めてはいたが、さすがに前日にもなるとなかなか落ち着かない気持ちになっていた。
「クレアお疲れ!!連絡してたと思うけど、壁外調査の前日の訓練は午前で終了なんだ。昼食後は明日の準備ができた者から自由行動だから少しのんびりすごしてね。もちろん夜の仕事も今日は休みだから。」
「あ、ハンジさん!お疲れ様です。なんだか前日なのに訓練が休みになると、急に何していいかわからなくなりますね……」
「そうだね、まぁ中には身辺整理する兵士がいたり、あとはめったに買えない嗜好品買ってる兵士もいたかなぁ。一応外出するときは声かけてね!」
「はい、わかりました。」
昼食はフレイアと2人で食べた。
なんとなくわかってはいたが一応午後の予定を聞いてみる。
「フレイア、午後はどうするの?」
「えっと……消灯時間のギリギリまで、エルドさんと一緒にいることにしたの……そうしたいって言ってくれたから…」
恥ずかしそうに答えるフレイアがいつもとは違って色っぽく見える。
恋の力とはなんと計り知れない。
子供っぽい容姿のクレアは心の底から羨ましくなった。
「そっか!一緒にいれる時間があってよかったね!私はどうしようかなぁ…」
「クレアは一緒にいたい人とか、いないの?」
「え?私?んー、ハンジさんはきっと一緒にいたいっていっても前日くらいゆっくりしなさいって言われちゃいそうだからなぁ。」
「もう!クレアのおバカ!そうじゃなくて!」
ん?このやりとり、以前にもしたことあるような…
「ねぇ、リヴァイ兵長とか…?」
「………!?」
あまりにも唐突すぎてスープを吹き出してしまいそうになるのを必死におさえた。