第66章 クーデターのその後
戴冠式が終わった後も、調査兵団は変わらず忙しい日々を送っていた。
ヒストリアは戴冠式後、すぐに大きな孤児院を建設し、地下街に壁の端から端まで調べ上げて孤児や困窮者を保護する政策を始めた。
今まで費やしていた王室の公費や、没収した議員の資産をまとめると、とんでもない莫大な金額となった。
その多額の金を、孤児院の運営や困窮者の支援に回したり、今まで資金不足だった調査兵団に割り当てたのだ。
今まで巻き上げられていた資金がきちんと調査兵団に入る様になったため、裏でエルヴィンやハンジ達が資金調達していた事に、ようやく終止符を打つことができた。
民衆に襲いかかる巨人を葬った英雄がこれだけ慎ましく健気ときてる。
人々はヒストリアの事を、親しみを込めて“牛飼いの女神様”と呼ぶようになった。
そして反対に個々の利益を優先し人類の存続をおびやかした罪により、議員一族及び関係者は、爵位を剥脱され、各地方の収容所に送り込まれた。
残された貴族階級には兵団に協力的な者と、反する者の間で税率の格差をつけ団結を阻害した。
内乱による死者以上に人類の中枢にあたる人材を失う事になったが、得た物も大きかった。
これまで中央憲兵によって抹消されてきたとされる技術革新の芽は秘密裏に保持されておりハンジの介入により兵器改良余地へと繋がる。
また、巨人が生み出したとされるレイス家領地の広大な地下洞窟の光る鉱石はエネルギーを消費しない資源として利用され住民に還元され、工業地を日夜照らし生産性を向上させた。
ヒストリアが即位して2ヶ月。
内政はどんどんクリアになり、人々の暮らしは劇的に明るく変化していった。
勿論ハンジ監督の元、エレンの硬質化実験も積極的に行われ、それはシガンシナ区の破壊された門を塞ぐだけではなく、ついには兵士が戦わなくても巨人を倒せる“巨人の処刑台”なるものまで完成させる事に成功した。