第65章 女王、ヒストリア・レイスの即位
「兵長……」
そんなリヴァイを見てクレアは思う。
きっとリヴァイは嬉しかったのだと。
王冠を真の王家であるレイス家に返上させるクーデターなど、この壁の歴史が始まって以来の大事件だ。
リヴァイは常に冷静に指揮、判断をくだしていたが、朝も夜も関係なく緊張状態が続いていた。
そんな苦しい中で入団してきたばかりの104期は、本当に逞しくリヴァイについてきた。
途中、ヒストリアの即位をめぐって不穏な空気にもなったが、リヴァイの兵士としての真面目な姿に少しずつ心動かされ、レイス卿領地の礼拝堂地下では、一糸乱れぬ見事なチームプレイを発揮する事ができたのだ。
苦しい中、一緒に戦ってくれた104期の新兵達。
手荒な真似をしたにも関わらず、最後は自分で戦うと選択をしたヒストリア。
そして、そんな自分に全力でぶつかってきてくれた事に、リヴァイは少なからず心動かされた筈だ。
ペトラやエルドの事を思い出しているだろうか…
ファーランとイザベルの事を思い出しているだろうか…
クレアはリヴァイの深い想いまではわからなかったが、そう連想できてしまう程にその表情は穏やかで柔らかかった。
「……………」
リヴァイの“ありがとう”発言に、104期達は固まり放心状態となってしまったが、クレアの心は晴れやかだ。
厩舎の窓からは澄んだ日が差し込み、暖かな風が吹き込む。
この心地の良い風はまるで、ウォール・マリア奪還へ向けて背中を押してくれてる様だ。
厩舎内の不穏な空気を気にも止めずにクレアは心中で静かに願う。
必ず生きて、ウォール・マリアを奪還したい…と。