第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
「硬質化……ってヤツだろ」
「えぇ?これ、オレがやったんですか?」
「お前を巨人から切り離しても…この巨人は消えてねぇ…結構な事じゃねぇか。」
「………あっ!!!あの瓶は?!そうだ!オレ…とっさに“ヨロイ”の瓶を飲み込んで巨人に…!」
リヴァイに声をかけられてやっと一連の事を思い出したエレン。
どうやらこの状況は、ロッド・レイスのカバンから転がり落ちていた“ヨロイ”と書かれた瓶の中身を飲み込んだ結果らしい。
「ロッド・レイスの鞄を見つけたんだけど…」
「あ……」
「鞄の中も…飛び散った他の容器も…潰れたり蒸発したりしてもう残っていない。」
ヒストリアは黒焦げになった鞄の一部をエレンに見せた。
人を巨人にできる注射など、巨人の謎が他にも沢山詰まっていたであろう鞄だったが、残念な事にロッド・レイスの巨人化によって全て無になってしまった様だ。
「そんな……」
結局エレンの口にした“ヨロイ”と書かれた瓶の正体はわからず終いだ。
「まぁ…まだ他の場所に隠してある可能性もゼロではない。だが今はそれはいい…その瓶の中身を摂り入れたお前は…これまでどうしてもできなかった硬質化の力を使って、天井を支え崩落を防ぎ俺達を熱と岩盤から守った。これが事実だ。」
「兵長…」
「お前にそんな教養があるとは思えねぇが…お前は一瞬でこれだけの建物を発想し生み出した…まったくデタラメだがあの壁も実際にこうして建ったんだろう。つまりこれでウォール・マリアの穴を塞ぐ事が可能になった。」
「……………」
「敵も味方も大勢死んで散々遠回りした不細工な格好だったが…俺達は無様にも、この到達点に辿り着いた。」
そう、なんの因果か偶然か…
エレンが土壇場で手にした力は、紛れもなく調査兵団の大きな目標であったウォール・マリアの壁に空いた穴を塞ぐ事ができる代物だった。