第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
「クレア…?ごめん……やられちゃった…」
「大丈夫ですよ、すぐに手当しますので…少し服、切りますね…」
意識はあるが、出血のせいか喋り方に力がない。
クレアはハサミで右肩の布を切ると患部の血液を軽く拭って状態を診た。
「ハンジさん、これはアンカーでやられましたか?」
「…うん…たぶんそう…散弾銃2発外していたから…チャンスだと思ったんだけど…油断しちゃったね…」
「そうでしたか…散弾を浴びたのでなくて良かったです。散弾だったら、全てを取り除くのは不可能に近いですから…出血も多いので少し縫いますね。」
「分かった…」
クレアは温存しておいた麻酔薬を手に取ると、ハンジの肩に投与した。
「これで少し痛み和らぎますから…あっ、ヒッチ?ランプって1つだけ?もうなかったっけ?」
「はい!あと2つはあったかと…」
「ランプ1つじゃ処置しにくいの…あと2つにも火つけてもらってもいい?」
「分かりました!!」
まだ周りは真っ暗で、日が昇るまで時間がかかりそうだ。
クレアはヒッチにランプの光を当ててもらいながら急いで処置をした。
「…よし。これで大丈夫です。ハンジさん、終わりました。痛みますか?」
「ううん…今はそんなに…薬のおかげかな…?」
「はい、痛みが強くなってきたら教えて下さいね。」
「クレア、ごめんね……」
「え…?」
消毒と縫合を終えて包帯を巻き終えると、ハンジは少し苦しそうな声でクレアに謝罪をした。
「リヴァイやみんなの事、心配でしょ…?それなのに私がやられちゃったからクレア、撤退になっちゃって…」
「そ、そんな事言わないで下さい…確かに皆さんの安否は心配ですが、それよりもハンジさんの傷の手当が最優先です!!あの時頭の中がパニックになってしまって…うろたえてしまいましたが、兵長の命令と判断に間違いはないと思ってます…」