第3章 衝撃的な出会い
ハンジの話は講義でも、広報でも、勧誘でもなかった。
巨人がいかに謎に包まれているか、自分がいかに巨人が好きか、捕獲実験の詳細、滾った瞬間などなど……
まさに一人劇場であった。
80分が経過したところでモブリットが
「分隊長!あと10分です!」
と忠告するも
まだまだ本題はこれからといわんばかりにしゃべりまくる。
「分隊長!時間です!」
「分隊長!20分オーバーです!」
「分隊長!時計見てください!」
「分隊長!訓練兵がかわいそうです…」
………刻々と時間は過ぎてゆく………
喋りはじめて3時間が経過したところで、顔に青筋立てたキース教官が乱入。
モブリットとキース教官に両腕抱えられてズルズルと引きずられながら強制退場となった。
それでも熱烈と何かを喋っていたが、最後に
「調査兵団の入団待ってるよー」
と言い残し姿が見えなくなった。
怒濤の3時間……
訓練兵はどんなにきつくしごかれた訓練より疲れていた。
否、疲れ切っていた。
疲弊しきって一点を見つめる者
居眠りなのか気を失っているのかわからぬ者
誰一人口を開く気力はなく、教室は静まり返っていた。
そんな中、クレアだけは違っていた。
今までに感じた事のないほどの興奮状態だった。
走ってもいないのに息は上り、心臓はうるさく鳴り響き今にも口から出てきてしまいそうだ。
──なんて自由な人なの…──
──なんて情熱的な人なの…──
──あの人が突き進んでいく先にはどんな景色が見えるのだろか──
あまり人と関わることをしてこなかったクレアだが、過酷な運命を強いられる調査兵でありながらも明るく、自由で、奔放で、熱血なハンジは、とても魅力的に感じた。
もっとハンジのことを知りたい
一緒に仕事をしてみたい
その仕事が壁外調査であるならば喜んで働こう
ハンジに心臓を捧げよう
そして呟く
「調査兵団に入ろう!」
ある秋の晴天昼下がり、ハンジのノンストップ熱弁により、1人の訓練兵が調査兵団への入団を心に決めた。