第64章 それぞれの決断に、変わる風向き
「総員散開!!複数で1人ずつ囲め!!」
敵のリーダー格と思われる女兵士、トラウテ・カーフェンは負けじと命令を出す。
圧倒的に人数に差があるのだ。
複数で、1人を囲むのは悪くない戦法だが、訓練に実践を積んできた調査兵団と、訓練はしてきたが本格的な実践経験は浅い中央第一憲兵。
果たしてどちらに軍配が上がるのだろうか。
ードォォォォン!!!ー
サシャが樽に火矢を打ち込めば激しく爆発し、更に地下の洞窟は煙で覆われていく。
「ゲホッ!ゲホッ!また煙だ!!クソッ!俺らを燻製にするつもりかよ!?」
「敵はどこだ?!」
ハンジ達の思惑通りこの手土産は、“複数で1人を囲む”という作戦を見事にうち破った様だ。
そして、アルミンは散弾をぶちまける対人立体機動装置にも弱点がある事に気づいていた。
それは、アンカーと射出機と散弾の射線が、同じ方向を向いている事だ。
つまり敵の移動時の背面側は、完全に射程外という事になる。
ーザクッ!!ー
ーザクッ!!ー
「ぎゃあぁぁ!!」
「ぐぁぁ!!」
一瞬で二ファ達を殺害した殺戮兵器も、仕組みを理解し、気づいてしまえば、恐ろしさも半減だ。
皆煙に隠れながら飛び回り、隙をついて背後から急所を狙って次々と攻撃を仕掛けていった。
ーザクッ!!ー
「クソッ!コイツ!!」
順調に攻めていたが、コニーが1人仕留めた所で近くにいた仲間に銃口を向けられてしまった。
「う、うぁ…!!」
ードスッ!!ー
散弾を浴びてしまうと、一瞬顔を蒼白させたコニーだったが、その引き金は引かれることなく敵兵士は落下していく。
「サ、サシャか?!」
「コニー!敵の数の方が多いんです!気をつけて下さい!!」
間一髪、サシャ放った矢によって一命をとりとめたコニー。
絶対に1人も欠けるわけにはいかない。
サシャは新しい矢を構えると、射抜ける敵はいないかと煙の合間を睨んだ。