第63章 敗北ばかりの調査兵団
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「あそこか……?」
物陰に隠れながら立体機動装置で街中を移動していると、騒ぎになっているであろう場所はすぐに見つける事ができた。
「分隊長…エルヴィン団長です……」
「あぁ…」
「それに、倒れているのは…」
「…………」
人だかりの真ん中に倒れている男はディモ・リーブス。
調査兵団と手を組む約束をしたリーブスがなぜ死んでいる。
「どういう事だ…?」
エルヴィンと憲兵の会話に耳を澄ませると、どうやら捕らわれたエレンを奪還するために調査兵がリーブス会長らを襲い、実行犯であるリヴァイ班はエレンを連れて逃亡中というありもしない疑いをかけられていた。
「ハメられたか……!?」
調査兵団は活動を停止。
団員全てに出頭命令まででた。
「分隊長、どうしますか?」
「…どうもこうもあるか…この事態はリヴァイ達の耳にもすぐに入るだろう…」
どうする…
奥歯を噛みしめて頭をフル回転させるが、そうしているうちにもエルヴィンは憲兵の用意した馬車に乗せられ連行されてしまった。
もしこの一連の事件が中央第一憲兵のしくんだ事ならエルヴィンは二度と戻ってこれないだろう。
最悪、誰の目にも止まらぬ所で抹殺される可能性もある。
リヴァイ達はリヴァイ達で、できる事をするはずだ。
それなら自分はどうする?
モブリットと2人で何ができる?
「……ん?」
エルヴィンが連れて行かれ、シンと静まり返った街中を見渡すと、ふと見覚えのある人物が目に飛び込んてきた。
建物の影に隠れながらコソコソと人だかりの様子をうかかってるのはリーブス商会会長の息子だ。
「あれは……」
「分隊長??」
ハンジは建物の上から狙いを定めると、立体機動装置を使って背後から掴みかかり、一瞬で屋根の上へと戻ってきた。
「んんんんん…!!」
何が起こったのかわからず、震えながら目を白黒させているフレーゲル。
「分隊長…彼は確か…」
「私がアジトを出た時すれ違ったのを覚えているかい?君は会長のご子息だね?名前は…?」
「…フレーゲル。」
目の前の相手が中央第一憲兵ではなく、調査兵団の人間と分かると、少し安心したのかフレーゲルは素直に名乗った。