第60章 新・リヴァイ班、始動
「それで…エレンの実験をよそうって考えてるのか…ハンジ?」
「あぁ…エレンの巨人の力が明るみになった時から中央の“何か”がエレンを手中に入れようと必死に動いてきた。しかし…今回の騒動以降はその切迫度が明らかに変わってきている。それまで踏み込めなかった領域に土足で入って来て、兵団組織が二分しかねない様なマネをしでかした。それも壁の中が不安定なこの時期にだ。」
「…………」
「この状況を普通に考えればライナー達の様な“外から来た敵”の仲間がずっと中央にはいたって事になる。つまり我々が危惧すべき事は、壁の外を睨んでいる間に背後から刺されて致命傷を負うことだ…」
「はぁ…それで?俺達は大人しくお茶会でもやってろって言い出す気か?」
ニックの死に責任を感じてショックだったのは理解できなくはないが、ハンジの逃げ腰具合にリヴァイもため息がもれてしまった。
「室内でできる事はまだ色々あるよ…編み物とか……」
「はぁ?編み物だぁ…?」
「……今だけ頼むよ…」
何が編み物だ。
あんな物を黙ってやってたら、それこそ背後から刺されかねない。
リヴァイはハンジの正気を取り戻すために少し声を荒げた。
「“今だけ”だと?それは違う、逆だ!」
「え?!」
「時間が経てば奴らが諦めるとでも思ってんのか?ここはいずれ見つかる。逃げてるだけじゃ時間が経つほど追い詰められる。ハンジ…お前は普段なら頭の切れる奴だ。だがニックが殺された事に責任を感じて逃げ腰になっちまってる。おい、ニックの爪は何枚剥がされていた?」
「…は?…爪?」
「見たんだろ?何枚だ?」
「わ、分からないよ…一瞬しか見れなかったし、あっ、でも…クレア…クレアは見たよね?覚えてる?」
「私ですか?」
急に話を振られて肩がビクリとなるが、確かにクレアはニックの遺体を見ていた。