第59章 奇行種、奔走
「……………」
朝、だろうか。
ボンヤリとした頭でクレアは目を閉じたまま考える。少し身体がだるいが、不思議と爽快感の様な感覚も入り混じっていてよく分からない。
ただ窓から朝日が入り込んでいるのか、閉じた瞼の裏側は真っ暗な暗闇ではなかった。
「………ん、えっと…」
ゆっくりと目を開けるとそこは自分の部屋ではなかった。
そして背後から誰かがきつく自身を抱きしめている。
「あ……」
この硬い筋肉のついた胸板、自身の胸元で組まれた細くて長い指、清潔感漂う石鹸の香り。
振り返って顔を確かめるまでもない。
今自分を抱きしめているのは愛しいリヴァイだ。
どうしてここで自分が寝ているのか、昨日の事をアレコレと思い返すと、次々と蘇ってくる記憶にカァッと顔が熱くなる。
全てを思い出したクレアははだけた胸元を、そして何も履いてない下半身をどうにかしたくなったが、自身を拘束するこの腕がそれを許してはくれなかった。
しかし、どうしようかとモゾモゾしだしたところで、少し不機嫌にも感じる低い声がクレアの鼓膜を刺激した。
「おい…起きてたのか?」
「ひぃ……!!」
まだ寝ていたと思っていた人物に突然声をかけられ、クレアの背筋はゾクリと反応してしまう。
「なんて声出してんだよ…襲われてぇのか?」
「ち、違います!!」
腕の拘束が緩んだため、クレアは寝返りをうってリヴァイの方を見ると目の前には至近距離にリヴァイ顔。
黒くてサラサラの髪に、長い睫毛、いったいどんな手入れをしているのか聞いてみたくなる程のきめ細やかな肌。
そんな女子力高めなリヴァイに目を奪われていると、その口元はニッと上がり顎を掴まれてしまった。
「昨日は派手に乱れてくれたな。おかげで俺にも“理想郷”とやらが見えた様な気がした。悪くなかったな…」
「え…えぇ?それはいったいどういう…」