第54章 裏切り者の戦士
しかし、悔しく嘆いている時間などない。
クレアは体勢を整えてハンジの元へ向かうと、超大型巨人はその巨大な腕を振り下ろし、ユミルと近くにいた兵士を掴み口に入れてしまった。
「ユ、ユミル……!!!」
ユミルは、現時点では人類側に味方してくれていると思える巨人化できる人間だ。
エレン同様敵の手に渡すわけにはいかない。
「総員戦闘用意!!超大型巨人を仕留めよ!!人類の仇そのものだ!!一斉にかかれ!!」
ハンジの命令にそこにいた兵士達は一斉に飛びかかる。
大岩の様な拳の攻撃をまともにくらったら、おそらく即死だろう。
しかし、この超大型巨人、今まで壁外調査で相手をしてきた巨人よりも動きが遅かった。
攻撃力は未知数だがスピードは遅め。
ここにいる兵士にもかすかだが、勝算が見えた。
「普段相手にしているサイズの巨人に比べれば…こんなもの…」
「今だ!!!全員で削ぎ取れ!!」
振り下ろした拳を持ち上げている間に、クレアを含めた9人の兵士がうなじにアンカーを刺し込んだ。
後は全員で息を合わせてそぎ取るだけ。
皆が切りかかろうとしたその時だった。
ーゴォォォォォォォォォ!!!!ー
「!!??」
「な、何これ…熱い!!」
「総員一旦引け!!!」
クレアも瞬時に壁上まで引いたが、素肌の出ていた手と頬がジリジリと痛んだ。
「い、いった……」
「うぅ…手が……」
「水だ!!誰か水を持ってこい!!」
超大型巨人に切りかかった兵士達は、突如発生させられた高温の蒸気でむき出しになってきた皮膚をやられてしまった様だ。
「また…消えるつもりか?!」
「いえハンジさん…様子が変です!」
「ん?!」
「以前なら一瞬で消えましたが、今は骨格を保ったまま…ロウソクの様に熱を発し続けています。このまはまあの蒸気で身を守られたら…立体機動の攻撃ができません…!!ど、どうすれば?!」
ハンジは少し考え込んだが、だした答えは意外にもシンプルだった。