第8章 迷える想い
今のフレイアの問いかけで、なぜリヴァイの姿が思い浮かんだのか。
クレアは自分自身に驚き、湯の中で大きくかぶりをふった。
「どうしたの?」
「な、なんでもない!なんでもない!」
よくよく考えれば自分もフレイアも年頃といえば年頃だ。
好きな人や恋人がいても不思議ではない。
兵団内でも恋人同士のような兵士もチラホラと見かけるため、兵団内は特に恋愛禁止ではなさそうだ。
だからといってなぜリヴァイなのだ。
確かにリヴァイは横暴なようだが、そればっかりではなかった。それはじゅうぶんにクレアにも理解できてはいる。
では自分はリヴァイのことを恋の対象として気にかけているのだろうか。
いざ自身に問いかけてみたが、なかなか答えはでなかった。
それどころか、考えれば考えるほどドキドキしてしまう。
今日は本当に朝から晩までリヴァイに振り回されっぱなしだ。
「……クレア。話聞いてくれてありがとうね!調査兵団に入ったからには覚悟決めて壁外調査に臨まないとね!でも、恋も諦めたくないから…死ぬ気で死なないように頑張る!」
フレイアの笑顔は、先程の死を感じさせるものではなくなっていた。
クレアもホッと胸をなでおろす。
部屋に戻ると、フレイアがクレアの髪に櫛を通してくれた。
「クレアはいいなぁ、こんなに可愛くて。髪もキレイだし、お人形みたい。」
「ありがとう。でも背はちっちゃいし、子供っぽくみられるからいいことばかりじゃないよ……フレイアみたいなスラッとした体型、私の憧れだよ。」
「ハハハ、お互いないものねだりだね!」
「フフフ、そうね。」
クレアは少しずつではあるがフレイアとの距離が縮まっているように感じていた。だが、まだまだ人付き合い初心者のクレアは、フレイアの想い人の名前を、どのタイミングで聞いて良いのかわからず、結局聞けず終いであった。
無事に壁外調査から生きて戻ってこれたら聞いてみよう。
2人は翌日の訓練に支障のでないよう、日付がかわる前に、床についた。
────壁外調査まではあと3週間────
それぞれの想いを胸に、日は刻一刻と壁外調査へと近づいていく。