第52章 雨
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エルヴィンの執務室ではアルミンが提案した作戦を中心に様々な事が話し合われた。
アルミンが割り出した女型の巨人の正体と思われる人物の名は104期訓練兵団を卒業後、憲兵団へと進んだアニ・レオンハート。
作戦は、エレンを逃がしたいと協力を仰ぎ、地下道まで誘導し、拘束するというものだ。
しかし、アニがその作戦に協力する気がなくあしらわれてしまえばもう作戦も何もなくなってしまう。
単純な作戦だが、成功率も極めて低い。
更に言ってしまえば証拠もない。
成功するかどうかは博打だ。
それでも、やらなければエレンの末路は明白。
何がなんでも失敗するわけにはいかなかった。
「エルヴィン団長…アニに協力を説得するのは、僕がやります。」
「アルミン?」
「僕がやります…アニの説得はこの作戦の肝となる部分です。立案した責任もありますし…僕にやらせて下さい。」
「説得に成功する勝算はどの程度ある?」
「……あまり自惚れた事は言いたくありませんが…ネス班長にシスさんをなんの躊躇いもなく殺したのに…あの時、壁外でフードをめくられた時、僕も殺そうと思ったらできたはずなんです。でも顔だけ確認して去っていった。アニが同期の僕に情けをかけたかどうかは分かりませんが…アニが僕を殺さなかった所に、賭けてみようと思ってます。」
「そうか……」
アルミンの言う事ももっともだろう。
話を聞く限り、女型の正体と思われるアニ・レオンハートは口数も少なく、訓練兵団でもあまり誰かとつるむ性格ではなかった様だ。
この作戦はエレンを逃がす協力を乞うもの。
そんなリスキーな事、初めて会う調査兵に手をかすなどまずしないだろう。
ここはアルミン頼りか……
「わかった。ではアルミン、アニ・レオンハートへの第一接触並びに説得。君に任せよう。頼んだぞ…」
「はい!!」
自信満々という訳ではないが、この中でアニへの説得が可能なのは恐らく自分しかいないだろう。
アルミンは覚悟を決めて敬礼をした。