第51章 第57回壁外調査
ー壁外調査当日ー
天気は雲ひとつ無い晴天。
気温も高く、馬で駆けたら少し汗ばみそうな気候だ。
今回からはカラネス区からの出発になるため、全兵士、早目の起床となる。
そのため毎朝早起きをしているクレアだが、今朝は更に早く起床をし、支度をしていた。
「…………」
ここ1週間は長距離索敵陣形の最終確認という事で、朝から夕方までほぼ全体で訓練になることが殆んどだった。
そのため、リヴァイの顔は見かけてはいたが、なかなか忙しく、会話らしい会話は皆無。
そしてリヴァイ班は古城から直接カラネス区に向かうため、今頃はもう出発しているだろう。
「…兵長……」
鏡に向かい髪を結い上げながら愛しい恋人の名を呼ぶ。
今までは壁外調査当日の朝はそこまで忙しくならないため、互いの無事を願い触れ合う事ができていた。
しかし今回はそれすらも叶わなかった。
次にリヴァイとまともに話す事ができるのは、自分が生きて帰還できた後だろう。
「行こう……」
クレアは自身の頬を叩き、なんとか奮い立たせると、部屋を出て厩舎へと向かった。
「おはようデイジー。いつもより少し早いけど、準備をしましょう?」
厩舎に来るとまだ誰もいなかった。
どうやらクレアが1番のりの様だ。
馬柵棒をくぐり、馬房の中に入ろうとすると、コツコツと厩舎の中に入ってくる足音が聞こえてくる。
「??」
挨拶をしようと思い振り返ると、厩舎の中に入ってきたのは104期の新兵だった。
「あら、ジャン…おはよう。」
「…………」
厩舎に入ってきたのは、新兵のジャン・キルシュタイン。
クレアから挨拶をしたが、ジャンは目を見開いてかたまっている。
どうしたのだろうか。
「……クレアさん…ですか??」
「………」
こんな反応をされるのは2度目だった。