第49章 104期入団
実の所、ハンジはエレンを調査兵団に連れて帰ると、直ぐに実験を始めたいと言い出し、一晩中執務室にこもっては、寝ずに実験計画案を作り出した。
そして翌日、そしてその翌日も1日中ハンジ班は巨人とつきっきりだった。
確かに巨人の謎の解明も大事だが、1ヶ月後にはエレンの存在価値を壁内の者達に認めさせるという大事な壁外調査も予定されている。
流石に訓練を疎かにする事はできない為、今日は訓練をする様にモブリットとクレアで説得をしたのだ。
不貞腐れながらも了承したはずだったが、いったいどうしたのだろうか。
「やっぱりじっとなんてしてられないよ!!捕獲したソニーとビーンの実験結果を元に今度はエレンの巨人化実験の計画案も立てたい!!だから!ねぇ?!クレア!私達にはじっとしてる暇なんてないんだよーーー!!」
「…………」
両手の拳を高々と上げ朝の厩舎で雄叫びを上げるハンジ。
その雄々し過ぎる叫びに何頭か驚いて馬房を蹴飛ばした。
「あの…ハンジさん…別に巨人の実験をしなかったからと言ってじっとしてる訳ではありません。訓練があります。なので今日は昨日決めた通り訓練しましょう?」
優しくなだめる様に進言するが、ハンジは余計に鼻息を荒くしてしまう。
「もう!理屈っぽい事言わなーい!!とにかく今日は実験!今日も実験!デイジーの掃除終わったらすぐ来てねー!あ、あとついでにランティスとイーグルの馬房掃除もお願いね!じゃあ後で!!」
ハンジはクレアの両肩にポンッと両手を置いて、自分とモブリットの愛馬の掃除も言いつけると、キラキラと眩しい笑顔で微笑みながら去っていった。
「…はぁ……」
ここにモブリットがいないあたり、もう既に何らかの仕事を押し付けられているに違いない。
仕方が無いがコレが我が敬愛するハンジ分隊長。
調査兵団の兵舎に戻ってきてからのテンションを考えれば、こうなるであろう事は十分予想できたのだ。
クレアは熊手を抱えると、一輪車のハンドルを握ってランティスとイーグルの馬房まで向かった。