第49章 104期入団
「そ、そう…ですね!きっとハンジさん、エレンと話したくて話したくてすぐに飛んでいくと思います。なので、またすぐ、会えますよね…」
少し目をそらしながらはにかむように微笑むクレア。
そのいじらしい姿にリヴァイが何も感じないわけがない。クレアの正面に立つと、そっと両頬を包んで上に向けた。
「へ、兵長…?」
「2人きりの時は我慢をしなくてもいいと…何度も言っただろう?」
「で…ですが…」
2人きりの時は我慢をしなくてもいい。
そう、これは今までリヴァイから散々言われてきた言葉だ。
その言葉の意味もちゃんと理解しているつもりだったが、中々実行に移すことができないでいたクレア。
強制的に視線を合わせられてしまえば、心臓の鼓動がたちどころに加速する。
ー寂しいですー
憲兵団の兵舎では勢い余って言ってしまったが、お互いの立場を冷静に考えると、アレコレと理性が邪魔をして中々言い出す事ができない。
だが、この状況だ。
訓練やエレンの事で、顔を合わせる事はできても、次いつ2人きりで言葉を交わす事ができるのかはまったくの不明だ。
後悔しないためにも、言える時に言っておかなければ。
クレアは覚悟を決めて気持ちを伝えようとしたが、リヴァイはゆっくりと顔を近づけたきた。
「あの…兵長…」
クレアの言葉が先か、唇が重なるのが先か…
脈打つ速度を上げた心臓がさらにうるさく拍動する。
ーコンコンー
しかし、2人の時間は乾いたノックの音によってあっけなく終了となってしまった。
「リヴァイ兵長…失礼します!」
入室してきたのはエレンだった。
「…エレンか…」
少しため息混じりでエレンの方を向いたリヴァイ。
この所はこんなんばかりだ。
「は、はい!あ、あの…オルオさんの馬が疝痛を起こしたみたいで、リヴァイ兵長を呼んでくる様に言われて来ました!!」
エレンは何故こんな早い時間にクレアがリヴァイの執務室にいるのか気になったが、今はそれどころではない。
「チッ、またラヴィーネか……」
以前もこんな事があったなと盛大に舌打ちをしたリヴァイ。仕方がないが、クレアとの2人きりの時間はこれでおしまいとなってしまった。