• テキストサイズ

第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第1章 第一章「乖離的慣性の法則」


「フィ......?うぅ...フィと一緒に寝たいって言ったら...怒る?」
水月ちゃんは、心証後ろ向きに、眼を逸らして指遊びをしながら訊いてくる。この質問には、今までの水月ちゃんの言動に慣れてしまってか、そこまで驚きはしなかった。でも、水月ちゃんの心には、少し落ち着きが無いというか、余裕を持てていない気がする。
「私で良ければ良いよっ。若しかして、夜一人だと寝付きにくいの?私は一人でだと寝付けなくて、小さい頃からずっと誰かと一緒に寝てるの。」
水月ちゃんは、静かに頷く。私はてっきり、素直に喜んでくれるのかと思ったが様子が今までと違った。
「お姉ちゃんには言わないでね、笑われちゃうから...。」
「本当にそうかな?私は、緑針さんが笑うとは思えないかな。」
「...どうしてそう思うの?」
私は、お風呂から静かに上がり水月ちゃんの近くに行って、少し寒そうに小刻みに震えている水月ちゃんを抱擁した。
「それはね、お姉さんは、水月ちゃんの事をとても大切に可愛がっているように見えたからかな。」
私がそう言うと、水月ちゃんは少し黙り込んだ。
「...私、本当は一人でいるのが嫌いで...、でも気持ちと逆の事をしちゃって、良く一人で泣いちゃうの。でも、それを誰にも相談出来なくて...。言ったら笑われる気がして...それが怖くて。でも、フィは私の話に真剣に考えてくれて...。」
水月ちゃんの緊張、長年溜まった膿を出せたのか、涙がほろほろと頬を伝い私の肩に零れた。私は、水月ちゃんの背中を擦って彼女を元気付ける様に宥める。浴場には、水月ちゃんの啜り泣く涙が、静かに響いていた。

 水月ちゃんの身体を洗い、暫く出湯で体の芯まで温めた後、お風呂を上がり着替えて、化粧室で歯磨きやトイレを終え、部屋を出た。
「あっ、水月一緒にお風呂入ってたのね。良かった、心配したのよ。」
緑針さんがそう言うと、水月ちゃんは面白可笑しく笑う。
「フィが言った通りだったね...。ありがと。」
緑針さんは不思議がっていたが、水月ちゃんの霞んだ気持ちが晴れたのに、私は気持ちの良い嬉しさを感じた。
「何か良く分かりませんけど、寝室まで案内しますね。」
「はい、お願いします。」
緑針さんは、私たちを先導して縁側を少し眠そうな足取りで進んだ。角を右に曲がって暫く進んだ所。
/ 108ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp