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ビタンズの惨劇

第8章 断罪



「ヤーシュ様、そんなに働かれて、お体に障りませんか」
「大丈夫だ」
「先日の戦争の疲れはとれましたか」
「大事無い。ああ、そうだ。あの戦、皇帝陛下がボクの働きぶりにいたく感動されてな。きっと大きな褒賞があるだろう」
「まあ、それはよかった」
「船団への攻撃が上手くいった。7千人の捕虜を捕らえたからな」
「まあ」

7千の捕虜…規模が大きすぎてよくわからない。

「7千人も捕まえたら、食事をとらせるにも一苦労ですね」
「そうとも。だから皆殺しにしたよ」
「まあ、皆殺しに…えっ」

こともなげに言われたので、一瞬なんだかわからなかった。

「えっ…えっ?」
「いちいち斬首もやってられない。海に落とすのが1番楽なのだが、7千の死体が岸に流れ着いたらそれはそれで大変だ。結局捕虜自身に大穴を掘らせて、その穴に生き埋めにした」
「えっ…そん…な…」

規模が大きすぎてよくわからない。
わからないけれど、おおごとなような気がする。

「ひ、ひどい…」

思わずそう呟くと、ヤーシュ様はたしなめるように言った。

「ボクの軍の食糧は、領民が、自分らの仲間を食わせるために提供してくれたものなのだ。しかもこの凶作続きの時にだ。捕虜にいちいち食わせる余裕はない。そもそも、戦場は命のやり取りをする場だ。捕虜にするまでもなく屠った敵兵など数えられないほどいる。戦争とはそもそも酷いものなのだ。ボクはそれにためらう訳にはいかんのだ」

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