第6章 戦争
と、自分の主人に対して失礼極まりないことを考えていた私だけど、ヤーシュ様はヤーシュ様で自論を語り続けた。
「そもそもボクは、この土地を愛している」
「はあ、ええ。それはわかります。昼夜を問わず治政に熱心で、ご立派だと思います」
「そうとも、だからこそ」
ヤーシュ様は私をジッと見つめ、手を差し伸べた。私はトテトテと歩み寄り、彼の胸に体をあずけた。
ふわりと、優しく柔らかく、抱きしめられた。
「この土地で産まれ、この土地の空気を吸い、この土地のものを食べ、この土地の民と共に育ってきたお前のようなものが、いっとう愛おしいのだ。ペシェ、愛している。お前を深く愛している」
彼の体から、澄んだ匂いがした。
ああ、ヤーシュ様。
いつも淡々と、情緒を感じさせない言葉で話すこの人の言葉は、どうして時にここまで甘いのだろう。
私はうっとりと目を閉じて、彼の体温に浸った。
「私も、あなたが愛おしいです。ヤーシュ様」