第6章 戦争
「ですが、私のような庶民の女で本当によいのですか?貴族の女性を迎えられるのが普通ではありませんか?」
「ああ…最初はボクもそう思っていた。しかし貴族の女はダメだな。気位が高いばかりで、ボクのやることを一向に理解しようとしない。あまつさえ、ボクの仕事の邪魔をしようとしてくる。よその公爵家の女と何人か付き合ったが、論外だ」
「さようですか…」
ヤーシュ様は重度の仕事中毒で、女性を構うことなど二の次どころか三の次だ。プライドの高い(であろう)貴族のご令嬢なら、ないがしろにされていると思うのかもしれない。
いや待てよ?
そもそもヤーシュ様といえば、血も涙もない冷血漢と名高い方だ。「戦神」で「流血公爵」だ。
私だって無理やり連れて来られたのでなければ、一生関わり合いになりたくなかった。まして貴族のお嬢様なら、あえてヤーシュ様と婚姻を、なんて望みもしないんじゃないかな。
ヤーシュ様が論外と言う以前に、相手の女性も論外と思っていたのかもしれないなあ。
つまり、付き合う前からフラレてたんだなこの方は。上手くいくはずないわ。