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ビタンズの惨劇

第4章 家庭



夜、私は領主様の寝台の上に座っていた。
扉の向こうは執務室。椅子を引く音が聞こえてきた。領主様が今日の仕事を終えられたのだろう。

ギィと音がして、こぢんまりした扉が開いたのがわかった。
灯りのないこの寝室の中では、領主様のお姿はよく見えないし、領主様からも私のことはよく見えていないだろう。
でもそれでよかったと思う。
表情をつくろうのも疲れるからね。これだけ暗ければ私が辛気臭い表情してても、バレやしない。


領主様は寝台まで歩み寄ると、私の位置を確かめ、そしてやんわりと押し倒した。
そうして今日も、いつもどおりの情事が始まる。



「んぎゅうっ…ふァッ、んぁ〜…ん!」

今日は後背位。四つん這いの状態でズンズンと突きこまれ、私は動物のような声を上げる。
まったくいつもどおり。と思っていたが、領主様が突然喋り出した。

「そういえば…婦長が明日から休暇を取るらしい。お前にはまだ伝えていなかったな」
「えっ、ん、あっはぃ…!」
「仕事の手順に変わりが出るかもしれん、明日の朝はまず使用人長の所へ確認に行け」
「はぁっ…ん、うぅん…。は、い…あぁあん」

え、それ、今?今言う話?
婦長は女性使用人を束ねる仕事の人だ。確かにあの人がいないと色々大変かもしれない。
でも今?今じゃないとダメそれ?

「故郷の父親が病気で倒れたそうだ。急に里帰りが決まった。いつまで帰らないかわからないが、少なくとも1週間はいないだろう」
「は…ぅンっ!はぁ、い…。わか、アァン…!まし、た…」

仕事の話をしながらも、領主様は動きをゆるめない。
でも返事をしない訳にもいかない。
なんなのこの人…頭がおかしいんじゃない?いやおかしいのは知ってたけど。

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