第2章 奉公
「 う、ん…!」
低い声が聞こえた。
でも私には何もわからなかった。
脳みそはぐちゃぐちゃで暑い。暑い。とにかく暑かった。
ずるっという音がして、私の体から重いものが消えた。
あ…抜かれたのか。
「ぐぅ…、ぅ!」
苦しそうな声。
ぬるりと生温かい感触がお腹の上に走った。体に何か、液体が。
ぼんやりとした頭でしばらく考え、それが領主様の精であるとことに気づいた。
今更何を言う気にもなれない。というか、何を言う権利もない。
私は目からこぼれ落ちる涙を拭うこともせずに、ただただ息を吸って吐いていた。
ふと気づいた時、領主様は私の脇まで来ていた。
いつのまに、どこから用意したのかわからない手ぬぐいをその手に持っている。
なんだろう。どうでもいいけど。
あ、手ぬぐいを私の顔に近づける。
なんだろう。なんだ…うぷ?
手ぬぐいを顔に押し付けられて、一瞬殺されるのかと思った。
でもそうじゃなかった。
領主様は、私の頬をつたう涙を拭ったのだ。
グシグシと動かされる手はどこか不器用で、優しげとは言い難い。
でもまさか領主様からそんなことをしてもらえるなんて、思わないじゃない?
私は少しポカンとして、されるがままにしていた。
ひととおり拭き終えると、領主様は手ぬぐいを私の手に押し付けた。
自分は別の手ぬぐいで、体についた汗やその他の体液をぬぐう。そうしてさっさと服を着て、部屋を出て行ってしまった。
私は一人取り残されて、しばらくはぼんやりとしていたけれど、そのうち下半身の痛みがジンジンと脳に響いて、思考が復活してきた。
そうしたらまた泣けてきて、いつの間にか夜もふけているし、部屋は広く暗く、私は一人ぼっちだ。
声を押し殺して泣いた。
私はこの館でこれから何をどうやっていけばいいだろうか 。