第5章 懐かしい温もり
桃井が心配する程、黒子は青白い顔で微かに震えていた。
ゾンビに追われたから、それだけではないのは分かる。
黒子の気持ちを考えると桃井は何と声をかけていいのか分からなかった。
その頃、未だ一人でゾンビと対峙していたは、疲労により手足が動かなくなってきていた。
普段から毎日バスケで鍛えているとはいえ、痛みも疲労も感じないゾンビが相手ではどうする事も出来ない。ゾンビの弱点を探るにしても三体相手にしなくてはいけない状況ではそれを見定める余裕はなく、とうとう壁際迄追い詰められてしまった。
「…約束、したのに…」
もう逃げるだけの体力もない。これまでかと諦め目を閉じたの目の前に現れたのは、予想もしていない人物だった。
「、久しぶりだね。」
「…どうして…ッ…」
目の前の光景が信じられずに、涙が浮かんでくる。
別れてから一年近くたつ、愛しい恋人だった彼は、たった一人でゾンビを灰とかしていた。
「辰也…」
「まさか、こんな場所で再会するなんて…」
涙を浮かべながら見上げると、昔と変わらない優しい微笑みを浮かべそっと抱きしめてくれた。
温かい…
は、目を閉じるとそのまま意識を手放してしまった。
「…遅くなってごめんね、もう二度と君を傷付けはしないよ。」
腕の中で静かに寝息を立てるを抱き上げた氷室は、此方へ向かい近づいてくる足音に気付き目尻に力を込める。
「あと少しだ!」
「ちゃん一人じゃない!」
「あれは…」
赤司を先頭に走ってきた四人は、を抱き佇んでいる氷室に驚き足を止めた。しかし、氷室は驚きもせずある一点を見つめていて、その視線の先にいた火神は息を飲む。