第4章 認めてもらう為に
「タイガ?」
「お前に何かあったら、辰也に顔向けできねーからな。」
「…無理しちゃって。」
「してねーよ!行くぞ」
二人で警戒しながらゆっくり歩いて行くと、同年代くらいの女の子が一人、佇んでいた。しかし…人間ではない。
先程見た化け物の様に異様な姿ではないが、体が透けて向こうの廊下が見えている。いわゆる幽霊のようだ。足のない幽霊から足音…と言うのが不思議だけど
「ゆ、ゆゆ幽霊かよ?!」
「タイガ、少し黙っていて…。こんばんは、貴女はここで何をしているの?」
「……ぃ」
「?」
容姿は可愛らしいのだが俯いたままで、目が合わない。
まるで此方に気づいていないようだが、会話が出来るのなら何か情報を拾えないかとは女の子に静かに語りかけた。
すると、微かに口を動かした女の子の声に耳を傾ける。
「お…願い……、逃げ…て…」
「な、何から逃げるってんだ?」
「皆…食べ…られて……死んじゃ…う」
「死ッ!?」
「…貴女は、誰かに殺されたの?」
タイガは女の子の言葉にパニックをおこしかけている、その気持ちは分かるけど、何故だろう…この女の子を怖い、とは感じない。むしろ…
「…逃げ…て…」
「あっ!」
初めて顔を上げ見つめた女の子の顔は酷く悲しげで、女の子は存在しなかったかのように、闇の中に消えてしまった。
「……タイガ、皆のところに戻ろう。」
「あ、ああ。」
火神の腕を掴むと踵を返し皆の元に戻る。
女の子の存在、会話の内容を四人に話すと信じられない様に驚いていたが四人とも疑う事なく聞いてくれた。
「あの子、皆食べられて死ぬって言ってた。でも、私はまだゾンビの様な化け物と姿は見ていないけど野獣の気配しか感じた事がない、一度体育館に戻って話し合った方がいいと思う。あの子は…きっと敵じゃない。」
「で、でも透けてたんだろ?しかも消えたって」
「敵なら忠告めいた事を言ったりしないだろ?」
「僕も木吉先輩の意見に賛成です。」
「まだ1時間はたってはいないが…戻るか?」
相談した結果引き返す事にした
のだが…
「なんでこーなんだよ!?」
「だ、黙って走って下さいッ」
「ゾンビ4体って、一人じゃ無理かな?」
「ちゃん戦おうとかしないで走る!マジヤバイって!」