第4章 経始【進】
流れ過ぎた血と痛みのせいで、目が霞み意識も朦朧としてくるが、休みなく与え続けられる痛みで、離れかけた意識を何度も連れ戻されてしまう。
『はっ...はぁ、はぁ.....っ...ふっ...はぁ』
もう悲鳴をあげる元気もなくただ与えられる痛みに耐え、一刻も早く髭切様の気が済むのを願うことしか出来ずにいた。
しかし、初の願いはまだ当分叶いそうにないと容易く分かるほどに、髭切の舌は勢いを増して動き続け、瞳も爛々としている。
『おねっ、がい...し...ます.......っ...もぅ...』
初の懇願を髭切が聞き入れる訳もなく尚も続く痛みに終止符を打ったのは、意外な人物であった。
?「いっ、いい加減にせぬか髭切
そのままでは我らが摂取する前にお主が其奴の血を搾り取ってしまいそうではないか!」
そう仰ったのは、姿は見えないが恐らく声だけで考えるとすれば、あの白髪長毛の刀剣男士様.....太刀の小狐丸様だろう。
それに続き他の刀剣男士達も声をあげ出す。
「そうだよー!独り占め反対!!」
「早く俺にもその血を寄越さぬか」
その声でようやく髭切が肩から口を離し身体を起こした。
するとずっと静かに鎮座し続けられていた刀剣男士様...太刀 三日月宗近様の声が降ってきた。
三日月「皆の言い分もそうだが、髭切、其方俺にはもう充分に、傷が癒えているように見えるぞ?」
その言葉に一同は一斉に髭切の身体を見やると、痛々しかった傷や汚れは綺麗さっぱりなくなっており、禍々しかった彼の 気 も幾分か浄化されているようだった。