第4章 経始【進】
ぴちゃぴちゃと音を立てて夢中で血を舐め続ける髭切の口角は上がっており、それを引き立たせるかのように唇の周りは真紅に染まっていく。
『うっ...い、痛っ.....ぁ』
痛みに耐えられず悲鳴にならない声をあげるが、髭切はその声で更に気を良くし、肩に歯をたて、新たな傷を作り出した。
ぷつり と音を立てて初の肩に髭切の尖った八重歯が突き刺さり、紅い血が顔を出した。
『っ...!!?』
思いがけない新たな痛みに身体をばたつかせ抵抗を試みるが、男性の力に適うはずもなく、
髭切「舐めにくいから動かないでくれるかな?」
と不機嫌に言われ先程よりも強い力で抑えられてしまう。
そんな2人を周りで見ている刀剣男士達は状況を飲み込めずにいた。
あくまでも、傷を癒す為に仕方なく、人間の血を摂取するはずだったのに、目の前の髭切は、無我夢中で人間の血を舐め続け、
更には 美味しい、独り占めしちゃい等と言い出している始末なのだ。
しかし、髭切が次々と傷を作っていくため、それに伴い血も溢れ、血の匂いが部屋中に充満しだした頃には、他の刀剣男士達までも、まだ口にしていないはずの初の血液の虜になっていた。
髭切の言うように、甘くて濃厚なその香りから想像する血の味は、刀剣男士達にとって最高級の馳走と言っても過言ではないはずだ。
ぴちゃぴちゃと舐める音と、僅かに漏れる悲鳴に混じり、誰かの唾を飲む音が聞こえた。