第4章 経始【進】
初と、初を抱えた男は3回の最も奥に位置する部屋の前にいた。
男は軽やかに襖を開け放った。
襖はスパーンと勢いよく音を立てて開き、中にいた人々が一斉にこちらに視線を向けた。
?「連れてきたぜ」
男は初を抱えたまま大股で歩みを進め、部屋の奥に鎮座していた男の目の前で初を降ろした。
その部屋にある全ての目が初を捉えた。
突然誘拐に近い形で連れてこられた初は、状況が理解出来ず、怯えてしまっている。
そんな姿を見て周りの人々は嘲笑ったり、鼻を鳴らしてあからさまに嫌な態度を取ったりと、様々である。
?「して、鶴丸。こやつを生かしてここへ連れてきたぜということは、何かあったからなのだろう。
勿体ぶらずに早く申せ。」
奥に鎮座していた男 ではなく、その隣にいた、爪と歯が鋭くとがった大柄の男が、初を連れてきた鶴丸と呼ばれた男に問いかけた。
鶴丸「まぁ落ち着け。
そうだな、こいつは血、または口から神気を俺らに移すことが出来るようだ。
その証拠に、愛染国俊の傷はすっかり癒え、あの有様だった蛍丸が治り、再び人の身をもてていた。」
驚きだろ?最後にそう加えて鶴丸はニヤリと笑った。