第2章 1day
それはよく晴れた日の事だった。ハートの海賊団船長、トラファルガー・ローは心地の良い日差しの元己の愛刀、鬼哭の手入れを行っていた。その周りにはべポ、シャチ、ペンギンも居る。
「キャプテン、次の島までそうかからないです。今回はどうしますか?」
「次の島にこれといった用はねぇが、必要な食料等は買い込んでおけ、ペンギン。」
「アイアイ、キャプテン。」
「アザラシ売ってないかな。」
「いやアザラシは売ってねーよ!」
「スミマセン…。」
比較的賑やかなメンバーに囲まれつつ、手入れを終え刀身鈍く輝く刀を日に照らす。すると1枚の真っ白な羽根がふわりと刀を撫で床へと落ちた。
次の瞬間、ふと不自然な暗い影が4人の上を覆い隠す。彼らは同時に空を見上げた。そこには一つの大きな塊。鳥なのか、人なのか。落ちてくるその物体のシルエットでは分からない。とりあえず分かることは、あの落下速度で船へ落ちてきたら流石に、船もタダでは済まないであろうという事だけ。おそらく潜水するよりも物体の方が先に落ちるだろう。トラファルガーは咄嗟に能力を発動させた。薄い膜が辺り一帯を包み込む。床へ落ちた羽根をつまみ上げ、ふわっ、と柔らかな動きで頭上へ軽く投げる。
「シャンブルズ。」
それはほんの一瞬の出来事だった。先程投げた羽根は空高くを舞い、落下していた物体はトラファルガーのすぐ頭の上へと移動する。羽根と物体の位置が、一瞬で入れ替わったのだ。そしてそれはトラファルガーの腕の中へと収まった。
「流石キャプテン、すげー判断力!」
「というか、それ人…女の子?」
「…みたいだな。」
細く伸びるしなやかな脚、ウェーブのかかった琥珀色の髪、人形のように白い肌…背中から生えたボロボロの翼と、首に掛けられた赤いチョーカー。落ちてきたのは鳥でもなければ人間でもない。ただ彼女は気を失っているのか、落ちて来たにも関わらず目は閉じたままで一言も声を発さない。
「うわー…スゲェ美人。でも傷だらけだな…。空島の出身ですかね?」
「空島の人間はこんなにデケェ羽じゃなかった気がするが…。」
「でも空島以外に羽根が生えた人間なんて聞いたことないよ?」
トラファルガーの周りを取り囲み思い思いの事を口にする3人。彼は抱いたままの彼女の身体を床へと降ろした。呼吸は一定だが、目を覚ます気配は今の所無い。