第5章 4day
「お前らではおれ達に勝てねェ。分かったらさっさと鍵を寄越してお前らが何処の海賊で何が目的なのか言え。応えたら、返してやる。」
「…ジョーカー。あの人がオレ達が契約してる海賊の頭だ。」
投げられた鍵を受け取ったトラファルガー。だが、その名を聞いた途端表情は険しいものへと変わった。オリビアは床に爪を立てキツく握り拳を作る。
「…その割には随分弱いな。」
「うるせーな!オレ達は海賊じゃねぇ!手頃な人間捕まえてヒューマンショップで捌く、それがオレ達の仕事で、契約だ。」
「契約の内容を話せ。」
「…。」
オリビアはアルの身体を支え口を閉じたまま、喋らない。唇を噛み締めトラファルガーを睨む。見兼ねて重い唇を開いたのはアルの方だった。
「決められた額を稼いで捕まった弟を返してもらう、それだけだ。」
「…なるほどな。」
トラファルガーはまるで2人に興味を失ったかのように持っていた心臓を投げ返した。慌ててそれをキャッチしたオリビアは恐る恐るアルの体にソレを押し込む。
すると、ひょっこりとべポが外から部屋をのぞき込んだ。怪我一つしていない。
「キャプテン、外も終わったよ。大丈夫だった?」
「良いところに来たな。べポ、の錠を解いてくれ。海楼石だ。」
「うん。…あれ、能力者だったの!?」
「その話は船に戻ってからゆっくり聞く。鎖は船に持ち帰るぞ、使える。」
カチ、と音を立て外れた鎖。軽くなった身体。床に手を付き立ち上がると少しふらついたが、どうってことない。は、トラファルガーに駆け寄り細い体に抱き着いた。
「……怖かったです。」
「…だろうな。」
「もう、ローに会えなくなってしまうのかと思って…。」
「助けてやっただろう。泣くな。」
トラファルガーの掌のがの頭に乗せられ優しく撫でる。この手が、好きだった。
「引き上げるぞ。貨物船にある必要な物を回収しろ。パンクハザードに向かう。」
「アイアイ、キャプテン!」
敬礼したべポは部屋の外へと走って行った。の手を引き、後から部屋を出ようとしたトラファルガー。隣に並ぶ彼の顔を見上げた。ぶっきらぼうで、横暴だが折々に見せる優しい表情。胸が熱くなるような痛み。この感情に名前を付けるなら多分…
航海、4日目
(多分、恋だ。)