第3章 2day
カモメの鳴き声が耳に響く。柔らかい日差しが、窓から差し込む。がハートの海賊団の船へ落ちてから、実に2日目となる朝が訪れた。シーツの擦れる音を立て身体を起き上がらせる。久しぶりにゆっくり身体を休めた為か、ここ最近よりもずっと身体が軽く感じた。は大きな欠伸一つ零すと、ぼんやりと窓の外を見る。…何やら、騒がしい。それに鼻を鳴らせばとてつもなくいい香りが鼻腔を擽る。彼女はその匂いに釣られるようにベッドから立ち上がり、扉を開いた。
「わぁ…!」
甲板は、まるでお祭りでも開かれているかのように賑やかだ。日中にもかかわらず酒を開け、豪華な料理が甲板のテーブルや樽の上、至るところに並べられている。天界でも見たことの無い光景に目を輝かせると同時に、の腹が空腹を訴えた。思わず腹を摩ってその光景を改めて眺める。自分はこの輪に加わっていいのかという疑問が頭に浮かぶ。その時だった。
「よぉ!目覚ましたんだなっ!」
「もう身体は大丈夫?沢山怪我してたけど…。」
「あ…は、はい。あの…ありがとうございます。しろくまさん、と……」
「おれはシャチ!この白熊がべポ。しばらくこの船に居るんだろ?よろしくな!」
サングラスで目は見えずともにっ、と人当たりのいい笑みを浮かべシャチはに向けて手を差し出した。その意味を直ぐに理解した彼女はその手を握り、気の抜けた笑みを浮かべる。
「しばらくお世話になる事になりました、です。よろしくお願いしますね。シャチさん、べポさん。」
「おれの事はべポでいいよ?」
「おれもシャチでいいぜ。」
「ふふ、わかりました。」
初めて顔を見た時から相当の美女だとは思っていたが、頬を緩めた彼女の笑顔にシャチは思わず視線を逸らした。…笑うと、すげェ可愛い。
感情を押しとどめ、何事も無かったかのように甲板へと視線を向ける。相変わらずの騒ぎだが、その視線は時折自分へ向けられてるのをは何となく感じていた。彼女は見世物にされている様な感覚に表情を歪めベポの後ろにそそくさと隠れる。
「あの…べポ。これって何の騒ぎなんですか?」
「え!?キャプテンから聞いてない?」
「これはお前を歓迎しての宴だぜ?当の本人は昼まで爆睡だったけどなー?」
「…もうお昼だったんですね。」