第2章 落翠
「あ、乱歩さん!いらっしゃい」
カラン、とベルの音と共に現れた人物に声をかける
あの日から一週間、彼…乱歩さんは毎日お店に顔を出すようになった
と言うのも、あの大量購入した駄菓子は当然全てを一人で持って帰れるはずもなく、ここに置いておくことになった
そして食べたいときにこうしてお店に来る、つまりボトルキープならぬ駄菓子キープ
その型破りな発想はもちろん乱歩さんの考えで
珍妙な提案に私も面白くて乗ってしまった
だけど何より驚いたのは、毎日飽きずに駄菓子を食べに来ること
この集落には仕事で来てるって言っていたけど、こんなに頻繁に来るってことは暇なのかな
仕事の内容を聞いてもあまり詳しく話してもらえなかったし…
まあでも、大人でお菓子好きな人がいて嬉しかったし、同世代の話し相手ができてなんだかホッとした
こんな田舎だから近所に住む方はお年寄りが多い上に、お客さんは子供たち…
同年代の若い人たちは、この村を離れて街の方へ移ってしてしまったようで
それと今では趣味となってしまったお菓子作り
時々作っては乱歩さんに食べてもらっている
お菓子作りは気分転換になるし、美味しそうに食べてくれるからこっちも作り甲斐がある
今日は結構上手くできたから、きっと喜んでくれると思うな