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UNKNOWN WORLD【文スト/江戸川乱歩】

第3章 稀代なる名探偵殿


小窓から見える晴れた空をぼんやりと見つめる

長閑(のどか)な外の空気とは対照的に、胸の奥は煩いほど高鳴っている

トイレまで逃げてきたのに、治まる気配は全くなくて

気持ちを空っぽにしようとしても頭を支配するのは、あの翠玉の瞳

先程といい、昨日といい
思い返すと心がざわついてしまうのは、自惚れなんだろうか


そもそもどうして毎日来てくれるんだろう
本当に暇だから?
それとも…?

どうして、どうして
と、そればかりが頭に浮かんでくる


淡い期待が胸を掠めて余計に鼓動が落ち着かない



乱歩さんは私の心を掻き乱す天才かもしれない







トイレから廊下へ出ると、店内へと戻るキッチンとは逆、右方向へ視線を向ける

窓がなく薄暗い廊下の突き当たりに見える一つの扉

年代を感じさせる木製の造りと家の古さとが相まって、昼間にも関わらず不気味さを醸し出している


この扉の先には…

「……おばあちゃん、ごめんね…」

声にならない声で呟くと、キッチンへと歩を進めた


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