第1章 貴方以外を好きになれたら
「雅治!」
「おお、ミア!…じゃあな、」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
私にはずっと苗字呼びなのに、あの子にはお互い名前呼びなんだ。
彼女でもないのに嫉妬してしまう自分が嫌になる。
笑顔で見送れるわけもない。
きっと私の今の顔は感情を抑えきれず嫉妬にまみれた醜い顔をしているんだろうな。
「気にすんなよ」
「…丸井」
「仁王のことだから、長続きしねぇって、」
「ううん、違う。ああ見えても仁王は一途だよ。」
丸井は、唯一私が仁王を好きなことを知っている相手。
もちろん、こんな醜い私なんて知らない。
だけど、丸井も好きな人がいるけど、その人も違う人が好きらしくて私の気持ちは分かるらしい。
「…お前、ほんっとずっと仁王だな。告白したら?」
「今告白してもフラレるに決まってるじゃん、それに、仁王は私のことなんてただの友達としか思ってないよ。
それさえ崩れるぐらいなら、私はこのままでいい」
「…そーかよ」
丸井と私は席が前後なので、よく話す。
しかし丸井は前を向いて何かしている。
もう私と話す気は今はないらしい。
「…他の人を好きになれたら良かったのにな、」
私がそう小さく呟いていたことは、誰も知らない。