第10章 サソリ
花奏を見つめれば、少し頬が赤く染まり恥ずかしがっている。
「どうした?何故そんな顔をしてんだ。オレまで調子狂うから止めろ」
「っ!……あ、ごめんなさい……」
さっきの笑顔から一転して、どんより落ち込んだ顔に変化した花奏は、名残惜しそうに手を離した。
「さて、行くぞ」
「………はい……サソリさん……」
とぼとぼ、寂しそうに歩いて後ろからついてくる花奏。
「…………………」
チっと舌打ちをして、振り返って花奏を見た。もう、この世の終わりみたいな顔してやがる。
「…………早く来い、ほら」
下を向いて泣きそうな花奏にオレは手を出した。
「え⁈」
真ん丸に目を見開いて、オレを見つめる。
「……早くしろ、花奏、今日限定だ」
「……え…⁈…今日だけですか?」
一瞬見えた笑顔が、また直ぐに落ち込む花奏。しょんぼりして、訴えるような目をオレに向ける。
「そんな目で見るな」
「……サソリさん…だって、今日だけとか、寂しいです……」
目を潤ませて、涙目に変わる花奏。
黙ってオレを見つめる。
「………………わかった。二人でいる時だけだからな」
手を握り、オレは花奏を引っ張るように歩き出した。はっきり言うが、泣かれる方がどう対処すれば良いか分からない。
「本当ですか!!」
「デイダラには他言するな」
釘を打つオレ。何故だ。自分で言いながら自分の行動や発言がまったく理解出来ない。何だこの気持ちは。
「はい!」
にっこりオレを見て嬉しそうに笑う花奏は、視線を夜空に向けた。
「流れ星に願った事、今叶いました。サソリさんと手が繋げるなんて、嬉しいです!」
「………バカか、花奏」
「えへへ、私、前からサソリさんが好きです。知ってると思いますが」
聞こえた花奏の声は、今まで耳にした事がないぐらい、カワイイ声だった。
「……ん?サソリさん、顔赤くない?」
「気のせいだ」
「ねえ、サソリさん?次はキスが良いなぁ」
「……調子に乗るな」
クスクス笑う花奏。
「それ以上していいなら、やってやるが?」
そう呟けば、花奏は真っ赤になって固まった。
fin