第10章 サソリ
「サソリさん!見て見て、流れ星!」
あぁ⁈と、気怠く声をあげながら夜空を見上げれば、オレの背中に花奏がぶつかった。
「いたっ!!…もぅーー、サソリさん、急に止まらないでくださいよーー」
どうやら顔面が、クリーンヒットしたらしく、鼻と口をさすりながら、ついでに尻もちまでついている。鈍臭い女だ。
「ご、ごめんなさい!思いっきり当たったからサソリさんも痛かったですよね?」
何年てめェは一緒に働いてんだ。いい加減覚えろ。
「この体は、痛みは感じない。てめェが痛いだけだ。手を出せ」
「……え…?……」
手を花奏に出したオレを、ポカンと、口を開けて見ているが、せっかちな性分のせいで苛々していた。
「知ってんだろ?オレは待たされんのが嫌いだってよ。早くしろ」
「は、はい!」
差し出したオレの手のひらを、しっかりと繋いで立った花奏は、満面の笑みに変わる。
「そうですね!急がないと…ふふふ」
何がそんなに嬉しいのか分からねーが、どうも機嫌が良いらしい。
「紅色の髪って素敵ですね。さっき当たったときに間近で見ちゃいました。サソリさんの髪ってサラサラなんですね」
にっこりと朗らかな笑顔をむける。
「!?」
花奏がこんなにも優しく笑った顔を、オレは見た事が無い……。
少し驚いて固まっていた。
はっと我に返って、オレは声を出す。
「何ヘラヘラして、いつまで握ってんだ、離せ」
「え、やだ、もう少しだけ、繋ぎたい……です」
「おい、それが忍の言うセリフか?何考えてんだ」
立ち止まって、こんな砂漠のど真ん中で、2人きりで手を繋ぎ合って、いったい何してんだ、オレたちは。