第6章 我愛羅さま
「我愛羅さまが……お見合い?」
秘書の私は思わず、
同じ言葉を繰り返している。
砂ノ隠れ里の風影室。
今日は朝から過ごしやすい良いお天気。
のんびりと1時間の休憩から戻ってきたら、「見合いの話が来た」
と、我愛羅さまから報告を受ける。
いつもの椅子に腰掛ける風影様を、失礼ながら、横からひん剥いて見ている。驚きを隠す余裕など、微塵もない。
「見合い話など、オレにくるとは想像していなかったが……」
開けた窓から風が息吹く。茜色の髪が少しなびいた。我愛羅さまは、少しばかり戸惑った表情をされている。
「そうですよね、ですよね。ねー、そんなまさか、お見合いだなんて……」
私は見合い話が流れるように、同調を得ようと声をかけるーーーーが、
我愛羅さまは届いた手紙を手に持ち、熱い視線を向けて黙って見ている。
「が、我愛羅さま?お受けになんてなりませんよね?」
心拍を跳ね上げながら聞いてみた。声は掠れて震えている。
「いや……少し考えている」
「そ、そうなんですか? へ、へぇー」
先程から私の顔は引きつったまんまだ。口なんか半開きだ。身体が硬直している。何なら変な汗まで、今流れ出してきた。
これはまさに、緊急事態。三年間秘書として支えてきた私にとって、最大級のピンチが今、押し寄せている。
「木ノ葉の六代目がわざわざ、オレに提案してくれた話だ。一度だけで良い、とりあえず会ってくれないかと要望書が今日届いた。しかもちゃっかり、お見合い写真も添えられてる。見てみるか?」
「あ、はい!」
ふわりと机に置かれた見合い写真を、我愛羅さまの真横に近づき、私は食い入るように見つめる。
「……うわぁ…なんて綺麗な人……」
まさに「絶世の美女」と呼ぶに相応しい女性がそこにいた。