第5章 シカマル 少甘
「花奏、けどよー、別の場所ならやりてェかな」
右に座る花奏の方を見ながら言う。
「…………どこ?」
「こっち向けば言うからよ、オレの顔見てくんねェ?」
朗らかな口調で話しかければ、ゆっくり、こちらを見た。
ーーちょっと目が泣いてんじゃねーか。あーあ。
「悪ぃ。調子乗りすぎて、オレ、花奏といると、何かおもしれェって思うんだ。今も飽きねーよ」
「…………本当?」
涙目になりながらも、微笑んでオレを見る。
「……可愛いーな、その反応……」
「か、可愛い⁈シカマル?ど、どうしたの?」
「花奏、オレにくれよ、一位になった、ご褒美」
「……え??何?何が欲しいの?」
「はい、か、いいえ、で答えてくれ」
「……はい……?」
「目を瞑ってくんねェ?」
合図を言えば目を素直に閉じてくれる。ふわりと掌で触れた頬の肌が、滑らかで気持ちが良い。
オレも目を閉じて唇を合わした。
キスの合間に呟く。
「花奏にオレはずっと惚れてんだぜ?知らなかったか?」
「ウソ、本当?」
「ウソなんかつくかよ、めんどくせー。もう一回しようぜ」
にやりと笑って、キスを堪能した。
「続きはまた、今度オレん家でやろうぜ」
「…………え、ま、まだ早くない?」
ーーまた変な想像してるな、将棋の話だっての。
「早くねぇよ、本当は今すぐにでもやりテェんだよ」
耳元でわざと囁いてやった。
顔から湯気が出そうな花奏を見て、オレは必至に笑うのを押し殺していた。
fin