第4章 瞳
「ーーんで?どうしてこうなった?」
花奏の一人暮らしのアパートに来ているが、オレは苛々しながら、コイツの前で、仁王立ちをしている。
目の前にいる好きな女が、両眼を包帯で何重にも積み重ねて巻いている姿は本当に痛々しい。
「目」だよ? 身体じゃない。
オレは、昔片目を怪我して、傷がまだ残っているが、男はどうだっていい。
女は駄目だ。しかもお前…両目って…忍、続けていけるのか?
ーーって聞きたいけど。それを聞いたら可哀想だから、触れてない。
花奏の話を聞けば、部屋を歩くのさえ困難らしい。常に目隠しした状態で生活を強いられるようだ。
いや、それ、どこぞの拷問よ。
「病院でどうして入院していなかった?何で退院したんだ?」
「わたしより重症患者が多数おられまして…日常的に動けるなら、通院にして欲しいとお願いされました。来週にもう一度病院に行きます。」
喋りながら下を向いて背中が丸まって…、ベッドで腰掛けて気落ちして、なんか…哀愁が漂ってるな。兎に角、余計な事は言わないでおこう。
ふぅ、とオレは息を出した。
「カカシ先生……御免なさい。じつは、別の敵に気を取られ過ぎて…。劇薬をかけられました……」
「それで?目は、元どおりに見えるようになるんだな?」
「…いえ、それが綱手様に見てもらったのですが、様子見だと…。まだ何とも言えない状況です」
「…嘘でしょ?お前…え?もし見え……」
ーーこれは言っては駄目だ!
んぐっと口を閉じたが、遅かった。
「そうなんです……もし…もし、このまま一生見えないままだったら、と思ったら恐くて恐くて……」
ああーー…やっちまった。両手を顔に置いて震えて……今のは駄目だ。
最低な先生だな、オレは。