第26章 カカシ先生
「カカシ先生ー」
アカデミーで歩いていれば、明るい声が背中から響いた。
カカシが振り向く前に柔らかな身体が腰にふれた。後ろから抱きついてきたのだ。
「きいてきいて? あたし上忍の試験に合格したんだよ?」
眩い笑顔に花が開く。下忍だった幼い表情からすこし大人びた表情に変わった。
「そっか。おめでと。花奏」
素直に嬉しい。カカシは目尻を下げて教え子の頭を優しくなでた。髪はさらさらで触れるだけで気持ちいい。
「凄いじゃない」
「せんせ? 上忍になったらデートしてくれるよね? あの話覚えている?」
「……そうだっけ」
固まったのは師であるカカシのほう。花奏は先生の反応なんて気にしない。ニコニコ嬉しそうにカカシの反応を待っている。
「……言ったっけ?忘れてたな」
「あ! ひっどぉいーー!!」
カカシの腕から急に離れた。花奏の頬が膨らむ。信じられない!と怒り目に変わった。
「先生ェ!あたしとデェトするっていった! あー最低ーー!もういいです!!」
プンプンして花奏は廊下を歩いて出口に向かった。
残されたカカシは困ったと頭をかいた。ついでに大きな溜め息もいっしょだ。
「教え子に手ェなんか出せるわけないでしょ……」
アカデミーの窓からグラウンドを覗いた。サクラに花奏が「聞いてよぉぉー! カカシ先生ったらねー!」と文句をいう姿を、黙って眺めていた。