第1章 路地裏inアンアン…?♡カカシ先生
「カカシ先生ー、残念でした!ここは行き止まりだよ。もうどこにも逃げられないからね」
私の声が、しんと静まり返った通路に響き、空気を震わせた。
やっと……やっと、カカシ先生を追い込んだ場所は、木ノ葉隠れ里の活気溢れる街並から、ほんの少し奥に入った、薄暗い路地裏の一角。
しかも、目の前には大きな壁があるんだから、もう前には進めない。
我慢しようとしても、つい、顔が綻んでしまう。カカシ先生をこんなところまで追い詰めちゃって文字通り「袋のネズミ」なんだから。
朝から、話しかけても避けられ、追いかけたらもっと逃げてられて、だんだん私も意地になって、最後の方は、真剣な「鬼ごっこ」をカカシ先生としていた。
身体中から汗を流し、全身で呼吸をしながら、いつもの優しい恩師の背中を見つめた。
「カカシ先生……足早いね、やっぱり。全然追いつかないんだもん……」
顔から浸る汗を左手で拭いながら、私はバレないように一緒に涙も拭いて、少し甲高い声で呟いてみた。
だけどやっぱり反応がない。
今、泣いたらダメなのに……泣くなって自分で思えば、余計に涙が出てしまう。
やっぱり……、好きな人に避けられるって結構堪える。気持ちが苦しい、落ち込んでしまう。
カカシ先生は優しくて、いっつも私に笑いかけてくれるから、それが普通だって思ってたよ。
本当に私を見ない。
ずーーっと前を向いて黙って立ったまんま。
「……っ、ねぇ、カカシ先生……?聞いてる?」
少し強めに呼びかけても、本当に、何にも反応してくれない。何か、何か言って欲しいのに、どうして何にも言ってくれないの?と、訴えるように少しの間、背中を見ていた。