第23章 我愛羅
「……が、願望はあるよ? その……相手も必要だし……色々と難しいけどね」
「どうして難しい? そんなにハードルが高い相手なのか?」
我愛羅はわたしを見る。翡翠色の瞳が綺麗で見惚れてしまう。
「……うん」
かける声は沈んだ。
我愛羅は風影で、
手の届かない場所にいる人。
……私じゃ釣り合わない。
「…そうか。だからか。数日前、待機所で泣いていたな、何があった?」
アクアブルーの真剣な綺麗な瞳が
私に向かう。ソファでとなりにいる。
心臓の音が聞こえてしまうほど近い。
「……我愛羅……うそ、見てたの?」
「ああ。花奏が泣くのは、よほどのことだ。最近気力がないように思えてな。みなに聞いたが、本人に直接聞く方が早いと回答されてな。……なにか悩み事か?」
「えと……」
真剣に聞かれても、なかなか言い出せない。恥ずかしい理由だ。酔ってるせいもあって、頭が回らない。
てかてか!みんな、なんで本人に聞けとか!ひどい!
それでも逃げてばかりじゃ
前に進めない。
「……じつはね」
私は正直に話すことにした。
隠しても隠し通せない。
玉砕覚悟で口をひらいた。
「じつは。我愛羅にデートを誘うつもりだったの。意を決して言おうとしたら、結婚式場で我愛羅を見つけて……結婚しちゃうと思って…」
断られたら、諦めれると……。
次の恋にいけると思ったのだ。
我愛羅は沈黙のあと、
口を開いた。
「……オレは結婚しないが?」
「そうなの!だから、勘違いしてたの。恥ずかしいね。じゃあ、帰るね?ありがとうお茶もらって」
立ち上がろうとした腕は捕まる。我愛羅の胸に引き寄せられた私。心臓が強く打つ。
「が、我愛羅……?」
「オレは酔ってるから、こういう事をしてるわけじゃない。オレはお前に昔から片想いをしていた。やっと里が落ち着いた今……素直になれる」
私を抱きしめる手に力がこもる。
私は目を見開く。
「が、我愛羅……私……」
「……好きだ」
「っ!」
私の頬を優しく撫でた我愛羅と目が合う。優しい穏やかな眼差しで、薄く目を細めた。
「え、うそ。……本当……?」
唇がそっと触れる。
「ああ……やっと素直になれる」
「我愛羅……」