第23章 我愛羅
「かか勝手につないでごめんなさい。もし倒れたら大変だと思って」
歩きながら慌てて伝えた。手をぶんぶんと振って……必死に否定して……ちょっとひどいかな。でも伝わったよね。
「なにを慌ててる」
我愛羅がぽかんとした表情で
私を見る。
「だ、だって!……まわりに見られたら……困るでしょう? 我愛羅は」
1週間前のこと。
結婚式場のお店へ入る我愛羅の姿を見つけた。ガラス越しだけど、白いウェディングドレスを着た綺麗な女の人が、そこにいたのだ。
顔はよく見えなかったけれど、華奢でスタイルが良くて、色白の腕が細くて……キラキラ輝いて、凄く綺麗だった。
我愛羅は穏やかに微笑んでいた。お似合いだと思うほど良い雰囲気で……。
私の入る隙はない。わたしは逃げるようにその場を立ち去った。帰り道は前が見えないほど泣いていた。
「どうした?固まってるが」
「ご、ごめん!じゃあ、家まで送るね」
焦る。我愛羅って顔が綺麗で女の子みたい。顔が整ってるよね。カッコいい。
見惚れてしまう。
いつの間にか
我愛羅の家についた。
「じゃあ……我愛羅。また来週」
「花奏、茶でも飲んでいけ」
「え、悪いよ」
「遠慮するな」
結婚間近の我愛羅だ。万が一、婚約者に誤解されたら大変だ。それなのに我愛羅は私の腕を掴んで、強引に家の中へと入ってしまう。
「我愛羅……!」
リビングへ向かってしまう背中を
追いかけた。
なにか気分を害したのか
急に不機嫌だ。
「お、おじゃまします……」
手を洗って、ソファに仕方なく座った。いいのだろうか。ソワソワ落ち着かない。綺麗に片付いた部屋。落ち着いた色で統一されたリビング。
女性モノはなくて、シカダイやテマリやカンクロウの写真が壁に飾っていた。
「我愛羅、やっぱ悪いよ。婚約者の方が見たら気を悪くしちゃう」
冷蔵庫から麦茶を入れる
我愛羅に声をかけた。
「……ウェディングドレス…とっても綺麗だったよ……羨ましいぐらい」
潤んでた。声が震えてた。鼓動を早めて、それでも言いたかった。
「お似合いだったよ。我愛羅と」
コトっと丸テーブルに置いた麦茶。氷が溶けてカランと鳴った。