第23章 我愛羅
「我愛羅?」
砂隠れ里の夜道を1人で歩く背中が見えた。紅色の髪と風影の正装服が、風になびいて揺れていた。
「珍しいね。酔ってる?」
後ろからポンと肩をたたいて声をかけた。友達と飲んだ帰りの私。
「ああ、花奏か……、会合が先ほどまであってな。つい飲み過ぎた」
「ビール?結構飲んだんじゃない?」
少し…いや結構?
アルコールの香りがくすぐる。
クスクスと、私の口から笑みがこぼれた。大戦が終わり、我愛羅に対して気軽に話しかけれる。凄く嬉しい。
彼を身近に感じる。
7代目のナルトや木ノ葉隠れ里と関わる前まで、我愛羅は恐かった。風影となると、今度は、地位が違うくて近寄りがたい存在にかわる。
私と我愛羅は同期で、
同い年なのに……。
今の我愛羅は、戦争もなくなりトゲが取れたみたいだ。優しくて穏やかで、たまに目尻を下げて笑うのだ。
「我愛羅さま」なんて部下から呼ばれるぐらい信望は厚くて。
ふわりと緩んだ表情に、私は優しい気持ちがあふれる。
「我愛羅ったら、ダメだよ。風影なんだから、敵に狙われたら大変だよ?」
「いまは平和だ。それに酔っても戦闘は出来る。心配するな」
腰につけた
小さな瓢箪を見せる我愛羅。
「でも心配だよ。やっぱり」
一度心臓が止まった時があった。
そのあと我愛羅が蘇生したとき、私は泣いたのだ。ボロボロ涙を流した。
辛くて胸が張り裂けそうで、初めて自分の気持ちをその時に知った。
だからかもしれない。
いまだに私は、なにかと心配性だ。
「あ、危ない」
我愛羅の足がもつれる。思わず腕を掴んだ。危ない。もう。
「ほら飲み過ぎ」
私がへの字にして怒った顔をすると、我愛羅は、罰が悪そうに困った顔をした。
「花奏、……悪い。一緒に家まで帰ってくれないか? やはり足がフラつく」
砂が風でそよぐ。
砂隠れ里は夜がいつも冷えた。
「ふふふ、うんいいよ。ほら、帰ろ」
手を握った。
「っごめん!」
思わず自分の手を離した。
ナチュラルに手を握って!
わたしは!