第19章 サンジくん
「サンジ……くん?」
船の地下階段を下る。メリー号には常温保存の食料の貯蔵室がある。暗い倉庫で電気のスイッチ探した。
宴会の夕食後、どうしても話をしたくて、サンジくんを探した。ここにもいない。
「飲みすぎかな……」
ふらふら酔いが回る。
足元がおぼつく。壁を伝いながら進んだ。固い突起を見つけてスイッチを押した。
ぱち……ぱち……
空音が響く。電気のスイッチを入れても灯りがつかないのだ。
「えーうそー」
暗くて何も見えない。恐怖さえ感じた。帰ろう…踵を返して、壁に触りながら歩いていたときだ。
「っ、あっ!」
足に硬いものが当たる。じゃがいもや人参が入った四角の木箱だ。
「っ!!」
斜めに身体が傾いて、転けそうになった途端に背中から人気を感じて、そのまま腰に手を回された。
「危ねェなー、花奏ちゃん」
ふわりと甘く香る料理の匂い。ため息が耳元で聞こえた。
「なにしてんだい。 危ねェぜ?」
私の身体を支えてくれたサンジくんの声が聞こえる。
「あ、ありがとう……サンジくん……」
わたしは酔ってて
顔が熱いし身体が熱い。
「急ぎの用事かい? もう寝たと思ってたぜ。花奏ちゃん」
わたしから、離れたスラリと長いサンジくんの腕。
「うん……どうして真っ暗な中で作業してるの?」
暗闇の中でサンジくんと話すと
変な気持ちになる。真っ暗でほとんど見えない。表情もわからない。
「あー悪ィ、 電球が切れちまったらしくてさ。明日の仕込みの分を取りに来たんだが……怖がる花奏ちゃん可愛いくて……つい」
「声かけてよーもう」
……声が笑ってる。ぜったいバカにしてる。わたしの口が尖っていた。
「ーーで? なんだい?」
「うん……あのね」
酔っ払っていた私は怖いもの知らずなの。大胆な言葉を出そうとしている。
でも。心臓は
強く鳴っていた。
「サンジ君は、ナミさんのこと……好きなの?」
じわじわと暗い部屋に目が慣れてきて、サンジくんの顔が見えてくる。
「……へ?」
わたしの突然な問いかけに
呆気に取られている。
「サンジくんは、ナミにだけ、"さん"付けするし……」
宴会の酔った勢いで、こんな所まで追いかけてきて、なんでこんな事を聞くのだ。