第18章 続き★サソリさん
「花奏」
「なんですか?」
「顔が緩んでるぞ」
そう言うサソリさんは、丸テーブルに頰づえをつく。真向かいに座る私を半眼で眺めている。
まあなーーんて、つまらなさそうな顔だ。失礼しちゃう。
「あ! サソリさんも一口いります? とっても美味しいですよ?」
銀のフォークで苺のモンブランを一口大に切って、「あーーん」と私が言ったら、ピキ…って筋が額に入った。
ひぃ!
「ケンカ売ってんのか?」
サソリさんは肩まゆを上げる。
「じょ、冗談ですよーー? や、ややだなあー、間に受けちゃってー……」
あー恐い恐い。
私はそのまま自分の口に甘いケーキを頬張った。
「んーー、美味しいーー」
完熟苺が使用されている。ピンク色の生クリームが甘くて口の中でとろけた。幸せ過ぎて笑みが出る。あーしあわせーー。
「さっさとコレも食って終わらせろ」
サソリさんは丸い白い皿を差し出した。皿の上には10種以上ある小さな苺ケーキが並んだ。
「ふふふ、はーい」
笑顔で皿を受け取る私。
今日も相変わらずのせっかち。「早く食え食え」ばっかり。
でもね今日はね、サソリさんを待たせてもいいの。
「サソリさん、ありがとうございます。こんな素敵なお店に連れて来てくれて」
お店を見渡した。天井が高くシャンデリアが煌めく。綺麗。高級ホテルみたいに広い。開放的でお洒落なお店だ。
「……泣かせた詫びだからな」
サソリさんは小さく呟く。
今朝、宿屋を出たあと、サソリさんが私を連れて来た場所は、デザートバイキングのお店だった。
しかも!
苺デザートビュッフェ。
軽食も置かれ、昼食にぴったりだ。チラシ寿司や天ぷら、生ハムとチーズ、オムライスもあった。
「ニヤニヤしてねえで、さっさと食え」
「はーい」
待つのが苦手なサソリさん。それなのに、座って私を待ってる。たまらなく、それが嬉しい。
「サソリさん? 」
「……なんだ?」
「大好きです」
アイスミルクティーを
口に含んだ。甘くてスッキリ。
サソリさんは、私のために
このお店に連れてきてくれた。
苺が大好きなことを
なぜか知っていた。
誰から聞いたのだろう。
言ったことないけどな……。