第15章 上忍カカシ
「おはよ、花奏」
「……おはよ」
待機所にカカシが欠伸をしながら入ってきた。今日は私と同じで、彼も待機みたいだ。
「なによ、その間は。なんか文句あるわけ?」
すとん、と、となりに座ったカカシは、ヤンキーみたいに絡むように、じぃぃーっと、怪訝な目で私を見た。
「いや、……違うくて。 あのさ、カカシ、なんか変だよ。喉がおかしくない?」
低音ボイスがさらに重低音になっている。いつも耳にする声とは少々違った気がしたからだ。
「ああ、よく分かったね。昨日さ、啼きすぎて……。 やめて、って言ったのに……凄かったよ」
「……いや、意味不明だから。 朝っぱらから、なにバカなこと言ってんのよ。じゃなくてさ、風邪じゃないの?それ」
半眼でつっこむと、しばらく黙ったカカシは、頭をぽりぽりと、かいた。
「んー、そんなに分かる? ちょっとズキズキするだけなんだよね」
「やっぱりそうじゃん。普通に言いなさいよ。ボケなくていいから。 あ、これあげるよ、カカシ」
ズボンのポケットから、丸い容れ物を取り出した。
「はい、咳止めのど飴。ほら、せき、のどの痛みって書いてるし、あげるよ。私も昨日の夜、急に痛くなって買ったんだよね。やっぱり冬だから乾燥してるのかもね」
「いらない。オレ甘いもの嫌いなーの」
「またそんな私の好意を無駄に……。ぶどう味だから、甘くないと思うけど?」
まあ、しかしながら、いらないと言い張る奴に、無理矢理あげるのは良くない。白く光沢がある丸いのど飴を一つ取り出して、自分で食べた。
「お前が食べるわけ?」
「え?うん」
ころころと口の中で舐めているけど、やっぱり甘くはない。いや、むしろ美味しくもない。シュガーレスだと書いているからか分からないけれど、あまり美味しいとは言えない。
やっぱり飴だけど、ほかの甘ったるい感じではないように作られているみたいだ。
視線を感じて横目で見れば、カカシがこちらをまだ不満そうに眺めていた。
「え?なに?あげないよ。 もうポケットにしまったからね? 残念でしたー」
と意地悪に言ってみた。日頃の仕返しだ。カカシに何かと嫌がらせをされているのだから、たまには私も言い返したい。