第13章 三角関係(暁)サソリ
「サソリさん」
「ぁあ? んだよ」
「ご飯食べに行きませんか?」
「コロスぞ。オレは食わねーって言ったろーが」
ギロリと睨んだサソリさん。だけど、私はニコニコしていた。
「じゃあ、映画は?」
「二時間もボケーっと座ってられっか」
「じゃあ、やっぱりごはんですね。サソリさん奢りですよ! 私を泣かした罰です!私、傷ついてショックで死にそうなんですから!」
小さく舌打ちしたサソリさんが、私の方へ顔を向けた。
「なにが食いてェか言え」
「オムライス屋さんか、スパゲティ屋さんか、あ、牛丼でもカツ丼でも良いです」
「分かった」
「じゃあ、いつにします?」
間髪入れずに聞いた私に、サソリさんは、目を見開き黙ったあと、
「いつでも良い」と言ってくれた。
「じゃあ明日は?明日暁休みでしょう?あ、ついでにクジ引きもしに行きましょう。今年引いてないし」
私は柔らかく笑いながら、思い切ってデートに誘った。
「明日も明後日も、サソリさんに会いたいし、そばにいたいんです」
「……ほんとしつけーな、お前は……」
私の頭にポンと置いた後、
ぐしゃぐしゃと優しく撫でた。
デートの返事は返ってこなかった。
けれど、
今までで一番優しい声が
聞こえた気がした。