第13章 三角関係(暁)サソリ
デイダラはトビを羽交い締めしながら、店を出て行った。1人残された私は寂しくビールを飲んだ。
何回告白したのだろうか。
何回振られたんだろうか。
涙が滲んだ。6杯目を頼んだ頃に、私は息が止まるように驚いた。
気配を消さずに、私の座る席に近づいてくる。心拍数が上がり、持っていたビールジョッキのグラスが小刻みに震えた。
酔いは、もう冷めてしまっていた。
「……まだ飲んでんのか。そろそろ止めろ」
サソリさんが店内に入ってきて、私の真正面の席に、怠そうに座った。
「……やけ酒です」
「デイダラとは付き合うようになったか?」
溜息混じりで聞いてきたサソリさんに、私は口を尖らせた。
「付き合いませんよ。私はサソリさんが好きなんだから」
「……好きじゃねーのか?」
「好きですよ。トビもイタチも鬼鮫も、みんな好き。でも、色が違うんです。 サソリさんに向ける色は他の人とは違う。抱いて欲しいって思うのはサソリさんだけですから」
恥ずかしがることなく、きっぱり言った私は、涼しい顔をしていた。そんな私を見て、視線を逸らす。
「どこがいいんだ、オレの」
「全部です」
「具体的に言ってみろ」
「顔」
「あぁ!? 顔!?」
「あと、髪。腕。指。身体。低い声。あと、格好良いところ。クールなところ。強いところ、せっかちなところ。怒りっぽいところ」
「オイ、後半は違ぇだろうが」
「ぜんぶ、好きなんです。短所も好きって思えるんです。サソリさんなら。あ、あと本当は優しいところ。私を心配して来てくれたんですよね?」
「勝手に言ってろ」と、そっぽ向いたサソリさんは、頭をガシガシとかいた。