第13章 三角関係(暁)サソリ
「早くしろ、帰るぞ」
遠くの方で、袴姿のサソリさんが
腕組みをして待っていた。
*
彼の背中を眺めて、私は歩いた。去年、みんなと同じようにクジを引いた。今年は引かなかった。
きっと、サソリさんは、
私と会話をしたくないのだ。
私を避けている。目も合わせない。
何か失礼なことをしたのかと、
少し前に直接、本人に聞いたけれど、
気のせいだろ、と はぐらかされた。
そんなわけ ないのにね。
「なにジロジロ見てんだ、うん」
訝しげに目を細めるデイダラに、
我に返った私は、慌てて口を開いた。
「あ……ええっと、サソリさんの袴姿がすごく格好良いなぁって思って! 素敵ですよね」
紅色の髪がサラサラと風になびき
漆黒の袴に美しく映えた。
「……褒めても何も出ねーぞ」
「あ、やっぱりバレちゃいました? でも嘘じゃないですよ? サソリさん、本当にお似合いです」
久しぶりの会話だ。しかも、ひと言。
背中を向けたままで、こちらを見向きもしないし、言い方もぶっきら棒。
それでも嬉しいと、心は素直に喜んだ。
「なに、ニヤニヤしてんだ、テメェ」
突然、デイダラが頭を ぎゅうぎゅう、
力いっぱい手で押さえつけてくる
「デイダラ、痛い痛い痛い!ギブギブギブ!」
「鬱陶しいんだよ、うん!」
さらに、力任せに頭をガシガシと撫でた。
「待って待って!髪の毛はやめて!今日バッチリセットしたんだからぁ!」
「うるせー、ムカつくんだよ、うん」
「……デイダラ先輩、男の嫉妬は醜いっスよ」
私とデイダラの後ろから、
トビが喋る。呆れた声だった。
「ああ"!? ちげーよ、コイツの顔が気に食わねーねんだよ、ヘラヘラヘラヘラしやがって、うん」
ベシベシベシベシまた頭を叩く。
「してないしてないしてない!」
「お前バレバレなんだよ、腑抜け野郎! シャキッとしろよ、シャキッと、うん!」
「野郎じゃないし!女だし!」って言ったあと、
サソリさんが静かに振り返る。
「黙って歩けねーのか」と睨み、
また前を向いて歩いた。
「あ、あのサソリさん、ごめんなさい……」
もうその言葉には反応なんてしてくれない。
静かに歩いていれば、
デイダラは私に
意味ありげに、肩をぽんぽんと叩いた。
「花奏、
ちょっとゲームしねーか、うん?」
「ゲーム?」
*